オルガン修理法
某教会の控室に何十年も
眠っていた、というか、
隅っこに片付けられて
忘れられていたリードオルガン
おなじみ、ヤマハ11ストップ!
昨年検品に出張して、
ネズミの害で音が出なくなった
というので見てみると、そうではない。
経年変化で風袋がパリパリに
破れてしまっていた、、、
その後電話などで相談して、
お見積を
何度か書き換え、いちばん安い
方法でなんとかすることに、、
それは、現場で分解して、風袋と
鍵盤部分を持ち帰り、風袋は張替え、
鍵盤なストップは分解掃除して、
リードは全部抜いて掃除して、
後日再び現場で組立てて、そこで
調律する、というもの。
この内容だと、
弾いた時のガタガタ感など
気になるものの、
調律と風袋張替えという二大作業を
することで、とにかく「楽器」として
蘇る、、、
分解の日、この機種に多い外装の
剥がれは、後日組立て時に目立たなく
するために着色することにした。
風袋の板の修理に結構手間が
かかったが、いよいよ袋張り
まずは、新しい蝶番をつけて、
袋がすんなり張れる位置
ねじ止めする
大袋のヒンジ部分内側。
ココのラバークロスは、
なかなか付けにくい。
大袋を張る。
小袋準備。
小袋の内側には厚紙が
貼ってある。
これを予め作っておく。
カタチに決まりはない。
とりあえず元の形状をまねて作る。
大袋を張る。
私の場合、張ってから、
余った部分を切り落とす。
翌日、小袋を張る
風袋のバルブ、ヤギ革製。
この機種のように8枚使う
大型の袋張りでは、使う革も
大量になる、、、
ペダルを踏みすぎたとき
空気を逃す、安全弁。
すり減ってガタが出ていた
ペダルローラーの軸受けは
新たに作り直した。
外装の塗装剥がし
剥離剤を使って剥がすのだが、
すんなり剥がれるものではなく、
刃物でじわじわと剥がす、、、
重厚な側板は、特に面倒
剥がした旧塗料、、
側板、塗装剥離前と、剥離後
ペダルの軸が外れず、
半日徒労、、
結局、軸は中で錆びて外れないので
外さずに、位置をずらして
穴を開け直すことにした。
塗装を剥がし終わった外装は、
改めて細かい取り残しを掻き取り、
全体にヤスリがけしておく
今回のオルガンは、
装飾も多く、部品点数が
バカ多い、、、徒労ついでに
並べて写真を撮った、、
夜、改めて細かい部品の
隙間の掻き残しを刃物で
取り除く、、
徒歩で10分、トホホで15分、、、
古いリードオルガン修理で
最も重要で、しかも
誰もこんなことしてない? ので
誰にもこのトホホ感が分かって
もらえないという孤独な作業、
再塗装するためには
古い塗膜を完全に剥がす
必要があり、先日の剥離剤は
全然用を成さないものだったので
別の剥離剤で再度挑戦!
木の肌が完全に出るまで、
製造番号26193
リードオルガンアトラスによると
デトロイトでほんの数十年だけ
作っていたメーカーで、
創意工夫、特許も多く、
堅牢で高級なオルガンを
作っていた、、、
上尾市、聖学院教会にある
Farrand&Votey リードオルガン
製造番号26193 推定1891年製
20年くらい前に、教会の
名物にしようと購入されたらしい。
が、1度演奏会をしただけで
あとはそのまま、楽器として
使われることなく時間が過ぎて
いったという、、
今回、このオルガンを楽器として
弾けるように復活させて、
教会の行事などで使っていきたい、
という依頼で、予め検品した結果、
風袋は何とか使えそうなので、
分解掃除と調律をすることにした。
鍵盤の上全体がパカッと開くのが
このメーカーの特徴
裏側。奥行きは意外にスリム。
デトロイトでほんの数十年だけ
花開いたリードオルガンの
メーカー、、
各部の作りはよく出来ていて、
かなりの高級品だったと思われる。
1891当時では、超ハイテク素材
だったはずの「セルロイド」
129年の時を経て、剥がれたり
しているものの、一枚も割れていない
反ったところは貼り直す。
ずっと回らなかった
Vox Humana、
プロペラが剥がれて
引っかかるので回らない。
貼り直せば回ると思う。
倒して、風袋の状態を検査。
小さなほころびがあるので
若干空気漏れがある。
本来の素材「ラバークロス」
ではなくテント用のビニール
みたいなものが使われているため
早く寿命がきてしまっている。
ペダルの位置が低いために
これまでずっと、
「弾きにくいオルガン」として
敬遠されてきたらしい。
ペダルの高さを上げようと
見てみたら、何と、ペダルのヒモを
調節出来る機能が付いていた!
大袋、小袋ともに、折り目に
ほころびがある。
響板まで外したところ
スエルのロッドは、アルミで
手作りされていた!
これも同型機種から部品を
取って使う、、、
風袋を外したところ
所々に残る「元の色」
鮮烈な赤!
ペダルの蝶番は、ドア用の
デカいものに換えられていた。
本来の構造に戻す必要がある。
リードオルガンの修理で
最も大変なのが「分解」である。
ねじ頭が潰れていたり、
サビが酷すぎてどんなに
力を入れてもウンともスンとも
言わない強固なネジ、、、
それでも力を入れて回そうと
するとドライバーが欠けてしまう。
同型機種のペダル二種、
木の欠けの少ない方を使う。
側板を外したところ。
この機種は、装飾が多い、、
再塗装するためには、
外せるところはことごとく
分解する。
ここまでバラバラに、、、
今回、このオルガンを直すために
このオルガンを解体して
部品を幾つか流用する
2020年1月18日、長野より預りの
ヤマハ11ストップ リードオルガン
製造番号は177211 推定1923年製
関東大震災の頃である。
最期は小学校で使われていたものを
廃棄されると聞き、引き取った
ものだという。
直るものなら直して、美術館に寄贈して
多くの人々に弾いてもらいたい、という
依頼である。
現状:
・鍵盤蓋が無くなっている
・風袋空気漏れ、演奏不可能
・装飾各部に欠損あり
・白鍵のみ貼り替え跡あり
鍵盤蓋が無い状態、、、
新しく作るか、似た機種から流用するか、
白鍵のみ貼り替え跡あり。妙に真っ白なのが
気になる人もいるかもしれないが、
これはこれで悪くは無いと思う。
無くなっている装飾
接着が剥がれた部品を現代のプラスネジで
堂々とネジ止めした箇所。目立つので、
接着はきちんとやり直して穴を塞ぐか、
1894年製
Chicago Cottage Organ 社製
リードオルガン
これまでに
風袋張替え、棚板再製作、
をして何とか弾けるように
したものの、ペダルひもが
切れてしまい演奏不可能に
なってしまった、、
ペダルが片方下がったままに
なるのは、ペダルひもが切れて
いるからである。
切れているのは左側の
ひもだが、今回は、左右とも
新しく付け替える。
分解すると分かること、、
このオルガンは、古びて
焦げ茶色に見えるが、元々
赤い色をしたオルガンだった。
分解の難しいオルガンは、
寝かせて手術する。
人間と同じように、、、
元々のひも(1番右、126年前?)に
重ねて後から別のひもがつけられて
左側は重ねた二枚が1度に切れて
しまった。
第3話「滴水穿石」
ベビーオルガン
(足踏み式オルガン)
のペダル描き、
唐草模様は、元の模様を
見ながらフリーハンド!
この塗料は乾くのに
24時間かかるので、
以前は1日1色ずつ
描いていた。が、
今は、乾いてない所に
触らないよう注意して、
3色くらい描く、、、
手は忙しいけど、
アタマがヒマなので、
ハードオフで買ってきた
歌謡ちゃんぽんレコードを
続けざまに何枚もかける。
伊勢佐木町ブルースは、
「Ah、、!、Ah、、!」
の部分だけ殊更に
オトナの女性が熱唱して
いるけど歌のない演奏。
コレを見てカラオケ的に
歌うものらしい。
いい湯だな、は、
元々内気だったけど子供3人
産んで逞しく生きるうちに
性格が変わったママ仲間、
「プラス思考母ちゃんズ」
的なグループの
最大音量で、ラリってる
どうにも止まらない快演!
本人歌唱の歌が入って
いたりして、ホントに
ごちゃまぜ、、、
7枚あるけど、本来は
10枚組なので、あと
3枚も見つけたいなぁと、
何となく思う、、、
オルガンのペダル描き
第2話「行雲流水」
昨夜の黄色がようよう
乾いた頃、2色目の
赤を描く、、、
ボテッと塗るには
塗料をたっぷり含ませた
筆でゆっくりゆっくり
描く、、
アタマがヒマなので
ハードオフで買って
しまった、世界の
音楽全集みたいなヤツを
延々とかける、、、
この手のレコードは、
見開きになっていて
何故か異国の成人女性
(ちゃんと服着た状態)
が横たわっている豪華な
写真が大きく載っている
ものが多い、のは、
何故だろう?
古代の石窟の壁画なども
意味のわからないものが
多いが、この、レコードの
見開きの横たわり女性の
写真も、すでに、考古学の
ナゾの一つとして、今後
研究が進むことを願う、、
シャンソン名曲集は、
アコーディオン中心の
少人数演奏で、秀逸!
繰り返し、何度も聴きたい
名盤をGETできた、、、
オルガンのペダル描き
第1話「輪郭下書編」
古いオルガンの
模様のあるペダルは
どうやって直すのかというと
模様のついたものを
買ってきて
「ペタっ」と貼れば良い
のではなく、
どこにも売っていないので
自分で描くことになる。
オルガンを完全に
直したい!
と思うヒトは多いけれど、
こういう作業があるから
なかなかみんな
やりたがらない、、、
出来上がってしまうと
何でもないことだけど
これから描く!、、
のは、何とも
トホホな気分、、、
一体どうやって描くの?
という疑問、、
こうやって描くのです、、
アタマがヒマなので
ハードオフで買った
昔の繁華街や商店街
でひたすら流れていた
ような歌謡曲ごちゃまぜな
レコードを何枚もかける。
船頭小唄マニアの私は、
石原裕次郎の船頭小唄
聴きたさに、この一枚を
108円も出して買ってしまった。
石原裕次郎も船頭小唄が
好きで、歌の前に、
「何でこんな歌が
いいのかって?
まぁいいじゃないですか」
と、石原裕次郎らしい
解説が入っている。
ベビーオルガンの
塗装、、
オルガンの敢然修理は
その大部分が塗装である。
コレは何十年も経った状態
右は塗膜を剥がして木の素地まで
出した状態、、
剥離剤をかけて、刃物で
はぎ取る、、
そして、塗装作業は
剥がして、素地を作る
ことで明け暮れる。
元の塗装を徹底的に
剥がす理由は、
美しい木目が
クッキリと出てくるから。
コレをやると、物凄く
面倒な作業になるけど、
古い楽器の古い木の
美しい木目を際立たせる
塗装をするには、
こうするしかない。
古い塗膜が木目をぼかして
いたものを剥がしてみると、
雄壮な猛々しい木目が
出てくる、、、
これから、
全体にヤスリをかけて
木工塗装で最も重要な
「目止め」作業をして、
小豆のような渋い
赤色に着色して、、
そこまで出来たら、
もう終わったようなもの。
中塗りや上塗りの前の
作業が、ニントモカントモ
にんにんでござる、、!
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